「会社を畳みたいが、解散登記や官報公告に何十万円もかける金がない」
「今は事業を停止するが、将来また再開する可能性が捨てきれない」
そんな経営者に残された裏技的な選択肢が、会社を「休眠」させることです。
正式な廃業(解散・清算)手続きをせずに、税務署に「休みます」と届けるだけで、毎年の税金や維持コストを限りなくゼロに近づけることができます。
今回は、廃業費用をかけずに会社を塩漬けにする「休眠」の手続きと、住民税(均等割)を免除してもらうためのポイントについて解説します。
「廃業」と「休眠」の決定的な違い
詳しくは『会社の清算手続き』で解説しましたが、会社を法的に消滅させる「廃業」には、登記費用や官報掲載費で最低でも10万円以上、司法書士報酬を含めると30万〜50万円のコストがかかります。
一方、「休眠」は登記簿上は会社を残したまま、営業活動だけを停止する状態です。
手続きにかかる実費は0円。役所への届出用紙代(コピー代)しかかかりません。
最大の懸念:毎年7万円の「均等割」はどうなる?
法人を持っているだけで発生する地方税、それが「法人住民税の均等割(赤字でも年間約7万円)」です。
「休眠しても、この7万円は払い続けなければならない」と勘違いしている経営者が多いですが、実は多くの自治体で免除(課税保留)が可能です。
「異動届出書」の提出が必須
自動的に免除されるわけではありません。以下の場所に「異動届出書(休業届)」を提出する必要があります。
- 税務署(国税)
- 都道府県税事務所(地方税)
- 市区町村役場(地方税)
備考欄に「○年○月○日より休業」と記載して提出すれば、実務上、均等割の課税がストップする自治体がほとんどです(※一部、例外的な自治体もあるため確認が必要です)。
休眠会社のメリット・デメリット
メリット
- コストゼロで会社を温存できる:将来、新規事業を始める際に、設立費用(約25万円)をかけずに再開できます。
- 社歴(業歴)が残る:創業10年、20年といった「オールドカンパニー」としての信用力をキープできます。
デメリット・注意点
- 「みなし解散」のリスク:最後の登記から12年経過すると、法務局の職権で勝手に解散させられます(役員変更登記をしていれば回避可能)。
- 借金は消えない:会社が残る以上、借入金や債務も残ります。債権者からの請求から逃れることはできません。
- 青色申告の承認取り消し:2期連続で期限内に申告しないと、青色申告の承認が取り消され、繰越欠損金が使えなくなる可能性があります。
「休眠」にするか?「売却」するか?
「とりあえず休眠」は有効な手段ですが、もし会社に「許認可」や「繰越欠損金(節税メリット)」があるなら、休眠させる前に「会社ごと売却(M&A)」できないか検討すべきです。
買い手にとっては、会社を設立する手間が省け、さらに過去の赤字(欠損金)を引き継いで節税できるため、「休眠会社(休眠殻)」でも数十万円〜数百万円で売れるケースがあります。
タダで寝かせておくより、売って現金化する方が得策かもしれません。
▼休眠手続きや売却の可能性を相談する
休眠のための確定申告や届出を税理士に依頼するか、あるいは「会社というハコ」自体を売却するか。税務のプロに相談して、最も損のない撤退方法を選びましょう。税理士ドットコム 公式サイト
まとめ:放置だけは絶対NG
最悪なのは、手続きを面倒くさがって「何もしないまま放置(バックレ)」することです。
役所は休業の事実を知らないため、毎年均等割の請求書を送り続け、最終的には社長個人の資産を差し押さえに来る可能性もあります。
休眠するなら、キッチリと届出を出す。
売るなら、価値があるうちに売る。
会社の幕引きは、経営者の責任として綺麗に行いましょう。
